ミュージック・シェアリングの皆様にご来訪いただきました
2022年6月24日掲載
特定非営利活動法人 ミュージック・シェアリングに訪問していただいて
令和4年6月15日、「特定非営利活動法人 ミュージック・シェアリング」(以降、「ミュージック・シェアリング」)が当院を訪問してくださいました。「ミュージック・シェアリング」は、ヴァイオリニストの五嶋みどりさんを中心とし、本物の音楽・音楽家により豊かな人間性を育む事を目的とし、療養中等の理由でコンサート等への外出が困難な方にも生の音楽を届けくださる活動を展開しています。
数年前に当院への訪問が決定していましたが、新型コロナウィルス感染症拡大により、なかなか実現が叶いませんでした。しかし、その間も「ミュージック・シェアリング」からは「配信プログラム」という形でクラシックの名曲を映像とともにお届けいただき、患者様との活動の中で音楽に親しむ機会を得ました。
本年度、訪問が決まった際には嬉しさ半面、新型コロナウィルス感染症の拡大から不安も感じましたが、感染症対策で面会や外出が制限され患者様の生活環境がより狭まる中、患者様が音楽により気分転換出来るのではと感じ、院長先生を始め多くの方々のご協力もあり、開催する事が出来ました。少人数制、開放的な空間で行う等、感染症対策に配慮してコンサートスケジュールを考えました。
当日は、五嶋みどりさんを始め4人のアーティストがぬくもりサポート館ホールや重症心身障害児者病棟、神経難病病棟で計6回のコンサート、18室の個室で演奏していただきました。演奏の前には、みどりさんから曲の説明や演奏の見所を丁寧に説明していただき、より曲を楽しむ事が出来ました。
実は事前の打ち合わせで、出来る限り多くの患者様にコンサートを楽しんでいただくため、ZOOM等で院内オンライン中継をする案もご相談していたのですが、「時間の可能な限り、生の演奏をお届けしたい」とおっしゃってくださり、分刻みのスケジュールで演奏してくださいました。実際に演奏していただき、CDや映像の音楽からは得られない音の響きや演奏者の呼吸等、生の演奏でしか感じる事が出来ない物が沢山ある事がわかりました。
重症心身障害児者病棟では、ベートーベンの「運命」の最初の部分「ジャジャジャジャーン」で多くの患者様が衝撃を受け、体を大きく動かし、声を出し、それぞれの表現方法で音楽を受け止めていらっしゃいました。神経難病病棟の個室訪問では、「心が安らかになった」と感動して涙される方もいらっしゃいました。
また、演奏だけではなく、患者様一人ひとりに声をかけてくださり、質問に真摯に答えてくださる姿には、私たち職員も学ぶ所が多くありました。
患者様への関わり方、演奏から、アーティストの皆さんの患者様に対する気持ちを強く感じ、感動したという言葉では表現しきれない気持ちを感じました。
このような素敵な機会を当院に提供してくださった「ミュージック・シェアリング」に深く感謝致します。
※患者様から写真掲載の許可をいただいております。
ミュージック・シェアリング訪問に寄せて
院長 奥田 聡
普段、芸術とは無関係な生活をしている私にとっても、五嶋みどりさんのバイオリンを間近で聞く、ということは信じられない出来事でした。
「演奏を聞く機会がない人々に本物の音楽を届けたい」というミュージック・シェアリングのコンセプト通り、訪問当日は朝から晩まで、音楽のシャワーを浴び続けた一日でした。当院ぬくもりサポート館(新館)のロビーで2回、重心病棟の療育訓練室で4回、カルテットのメンバーとともに弦楽四重奏が演奏され、さらに人工呼吸器装着などで演奏会場に出られない患者さんのために、4人のメンバーがそれぞれ重心病棟、難病病棟の病室を回ってくれました。
特に忘れられない光景があります。重心病棟の個室にみどりさんが訪室された時のことです。重度障害のため、通常のコミュニケーションはとれないお子さんに、みどりさんが近づき、すこし腰をかがめて、弾き聞かせるようにバッハの無伴奏パルティータ(無伴奏ソナタだったかも・・・笑)を演奏してくださいました。不思議なことに、演奏中その子の両足が音楽に合わせてリズムをとるように規則正しくピックピックしていました。
「演奏を聞く機会がない人々に本物の音楽を届けたい」というミュージック・シェアリングのコンセプト通り、訪問当日は朝から晩まで、音楽のシャワーを浴び続けた一日でした。当院ぬくもりサポート館(新館)のロビーで2回、重心病棟の療育訓練室で4回、カルテットのメンバーとともに弦楽四重奏が演奏され、さらに人工呼吸器装着などで演奏会場に出られない患者さんのために、4人のメンバーがそれぞれ重心病棟、難病病棟の病室を回ってくれました。
特に忘れられない光景があります。重心病棟の個室にみどりさんが訪室された時のことです。重度障害のため、通常のコミュニケーションはとれないお子さんに、みどりさんが近づき、すこし腰をかがめて、弾き聞かせるようにバッハの無伴奏パルティータ(無伴奏ソナタだったかも・・・笑)を演奏してくださいました。不思議なことに、演奏中その子の両足が音楽に合わせてリズムをとるように規則正しくピックピックしていました。
Photo.by 奥村秀則先生(歯科口腔外科)
重心病棟の看護・療育スタッフはその子らの皮膚の色の変化や脈拍の変化を見て、「今、喜んでいる」とか「興奮している」と言います。私はその境地にはほど遠く、正直なところ世界的バイオリニストが重心病棟で演奏するとどういうことになるのか、ならないのか、若干不安もありました。しかし、拍手や歓声を挙げることはできなくても子供たちに音楽は確実に届き、彼らは何かを感じ大きな喜びを得たと確信しました。おそらくみどりさんもそう感じてくださったのではないかと思います。
その感動を御本人に伝えるつもりが、つい「そのバイオリンはあのグァルネリ・デル・ジェスですか?」などと余計なことを聞いてしまいました。みどりさんは笑顔で「ええ、そうです。ノエミの使っているチェロも相当高価なものですよ。」とお答えいただきました。
帰りの駅までメンバーを車で送るスタッフに、これから彼が運ぶ楽器の値段を伝えて注意を与えるべきか迷いましたが・・・さすがにやめておきました。
みどりさん、イェービンさん、エリカさん、ノエミさん、夢のような時間を本当にありがとうございました。
今回の素晴らしい企画を実現、運営してくれた北1病棟のスタッフ、また、コンサート中も患者さんの送り迎えや痰の吸引、リハビリ時間の調節などなど陰で支えてくれた各病棟・リハビリ・事務職員のスタッフに厚く御礼申し上げます。特に庶務班長さん、無事にカルテットの皆さんと楽器を名古屋駅に届けてくれてありがとう!